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■「人口問題」はもっと慎重に
日本において人口問題は、国家・産業の盛衰や食糧・住宅事情などに応じて、昔から論議を呼んできました。
総じて戦前は過剰対策としてハワイやブラジルなどへの移民が奨励され、戦後の経済成長期は、
産業間の移動と農漁村から商工業都市への移住が比較的機能してきたようです。
しかしここへきて、少子高齢化の行き着く先を短絡的に労働力不足に結び付けて、
海外から労働者を招くとか、移民受け入れの法制化の提議までとみにかまびすしくなってきつつあり、
いささか冷静さや長期展望施策を欠く尚早論が目立ってきています。
人口構造に関しては、静態・動態両学問を踏まえた人口理論と政治・経済・科学・文化各界の長期戦略が、
総合的観点から打ち立てられるべきものだと考えます。総務省や厚生省の提示するほんの一部のデータだけを鵜呑みにし、
しかも中身を読み違えているとしか思えないような論点を掲げて騒ぐだけのジャーナリズムや、
それらに踊らされる一部政治家に、わが国の未来を託してよいのだろうか。
特に「人口動態学」の専門家の提示する多角的観点からの諸々のデータをほとんど目にできないこと、
さらにそうしたデータを対比分析した深みのある論評に出くわしたことがないことに、一抹の危惧を抱いています。
■「生産年齢人口」数値のとらえ方に大誤算あり
まず、生産年齢人口(15~64歳)の取り上げ方に大きな誤謬があることを痛感します。
1960年代には、中学卒で就業した人は半数はいたでしょうし、進学した人も8割は高校卒で
就職していたでしょう。つまり15~18歳の就業率は、ざっくり見ても9割近かったわけです。
>>2へ続く
産経新聞 5月4日(日)21時4分配信
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