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ヒグマの実像
門崎允昭 日本獣医学会 1998年大会 記念講演の要旨
北海道では現在約2千頭の羆(ヒグマ)が全道面積の半分の地域に生息しているが、
この羆達をいつまでも野生で生かし続けるためには、まず羆による人身事故の防止が大切である。
そこで羆が人を襲う原因とその対策についてご紹介しよう。 残念ながら稀に羆は人を襲うことがあるが、
それには必ず理由がある。北海道で1970年から1998年までの、この29年間に発生した羆による
人身事故は44件。この内16件が猟師の事故で、銃撃失敗後の深追いに対する羆の反撃によるもの。
一般人の事故は28件で、この内死亡は9件である。一般人を襲う羆は子連れの母熊(8件)か
精神的に不安定な2歳から4歳(4歳は稀)の若熊(19件)であり、1歳以下の幼獣や単独の成獣が
一般人を襲うことはまずない。
多くの人が「羆は皆人を襲う可能性がある」との先入観をいだいているがそれは間違いである。
そのことは北海道に約2千頭の羆がいるが、この29年間の羆による一般人の事故は28件。
この結果から1年間の事件平均発生率は1件となる。要するに一般人を襲う羆の存在率は
2千分の1頭ということである。これで人を襲う羆はいかに少ないかお分かりいただけたと思う。