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★核のごみ処分、世界で難航 フランスが3カ国目の具体化
2023年4月26日 2:00
原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の処分が世界で難航している。
欧州では原発活用と核のごみの処分場をセットにするルールづくりが始まったものの建設が進むのは2カ国しかない。
日本は北海道で調査を始めたが停滞気味だ。各国が懸案を乗り越えないと原発の持続的な活用は難しい。
フランスの放射性廃棄物管理機関(ANDRA)は1月、原発から出る高レベル放射性廃棄物の
最終処分場を仏北東部の農村部ビュールに建設する計画を仏政府に申請した。
「我々が生み出した放射性廃棄物を将来世代に残さないように責任を見せる」と強調した。
仏政府が承認すれば世界で3例目となる。
多くの電力を原子力に依存する原発大国のフランスにとって最終処分場の建設は長年の懸案だった。
広さ15平方キロメートルの処分場を地下500メートルの場所につくる。順調に進めば2027年に建設を開始。
安全性の審査などに約5年かかり、廃棄物を試験的に運び入れるのは早くて35年からになる。
核のごみを地下深くに埋める方式は地層処分と呼ぶ。高レベル放射性廃棄物は約10万年にわたり
放射線を出し続け、地上に保管するのは危険なため、日本を含め世界の多くはこの方式を検討、採用している。
世界で原子力の電力利用が始まってから約70年。使用済み核燃料などの廃棄物をどこに処分するかは
原発の推進国、脱原発を決めた国の両方で難航するテーマだ。稼働している最終処分場はまだない。
これまでに国が具体化を認可した2例は、発電量に占める原発の比率が高い北欧だ。
フィンランドが既に建設中で、スウェーデンは22年1月に処分場の場所を決めた。
米国は政権交代で政策が揺れる。一度はネバダ州の施設が処分場として決まっていたが、オバマ政権で計画中止になった。
トランプ政権が再度、処分場にしようと試みたが、いまだに決定には至っていない。
脱原発を決め、廃炉作業を進めるドイツは、適地とみなした地域の地下に一度は実験施設を作った。
だ、地盤の問題や住民の反対運動で撤回。改めて適正地を示した地図を公表したが、
国土の半分が含まれており、絞り込むには至っていない。英国なども建設着手はまだだ。
処分場の必要性は欧州連合(EU)の決めたルールからも明確だ。
EUは22年7月、環境面で持続可能な事業かどうかを定めた「EUタクソノミー」で、原発を「グリーン」な電源と認定した。
条件として、原発から出る高レベル放射性廃棄物の処分施設の具体的な計画をつくることを求めた。
日本は処分場の候補として名乗り出た北海道寿都(すっつ)町と神恵内(かもえない)村について
20年11月に最初の段階の「文献調査」が始まった。地質図や学術論文などを調べ、適地かどうか机上で探る内容だ。
2年ほどとされた想定期間より調査は長引いている。
もともとは原子力発電環境整備機構(NUMO)に一任する手法で進めていたが、専門家を加えてデータを
評価する手法をとるよう経済産業省が22年4月に提案。「文献調査の終わりはまだ先になる」(同機構)という。
さらに別のハードルもある。核のごみの持ち込みを受け入れがたいとする条例を北海道が定めていることだ。
鈴木直道知事は文献調査の次のステップとなる概要調査に「反対する」との意向を示す。
政府は2月に決めた新たな基本方針で核のごみの最終処分に「政府の責任で最終処分に向けて取り組む」と
打ち出したが、具体策は見えない。
岸田文雄首相はBSテレ東番組で次世代原発の開発と放射性廃棄物の処分を巡り
「順番にやるべきだという議論があるが同時に努力しなければいけない課題だ」と話す。
日本は核燃料資源を循環して使うサイクル政策も行き詰まっており、核のごみを大量に抱えている。
自治体や電力会社に任せず、国が前面に立たなければ長期に原発を使う環境は整いにくい。
(気候変動エディター 塙和也、神野恭輔)
日経新聞 URLリンク(www.nikkei.com)