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★アベノミクスという「魔法」の終わり 副島国家戦略研究所 研究員 中田 安彦 氏
●<今や円安は国民の幸せにつながらない>
だが、アベノミクスの「第一の矢」である異次元の金融緩和を実際にやってみてわかったことは、
「円安ではかつてのように日本企業の海外への輸出が増えていかない」という厳然たる事実である。
そのうえ、円安によって原油や天然ガスの輸入コストが上昇した。
政府は、今ストップしている原発のいくつかを再稼働させようとしているが、
これまでのように3割の電力を原発で賄うとはならないだろう。
円安の影響もあって、13年の貿易赤字は13.7兆円と過去最大だった。
日本企業の輸出が伸びないのは、2000年代にトヨタやホンダ、日産などの自動車メーカーやパナソニックなどの
電機メーカーは、中国や東南アジア、アメリカなど輸出先の国々やそれに近い労働コストが安い地域まで
組み立て工場を移転しているからである。現在はトヨタは全生産に占める割合で言えば、
海外生産がすでに6割であり、国内生産は4割であるとFT紙(3月9日)が報道している。
この流れは今度も強まる一方だろう。
だから、WSJ紙のインタビューでも黒田日銀総裁は述べているが、日本の景気回復は、製造業ではなく、
非製造業やサービス業の内需産業が牽引しているのだ。テレビも携帯電話も中国や東南アジアから輸入している
。iPhoneなどのスマートフォンは、ほとんど中国製だ。FTは2月10日の記事で、そのような輸入した商品をさばく
巨大な倉庫や物流センターの投資が伸びていると報告している。
以上を考えれば、日銀の金融緩和は、資産家層とサラリーマン層の格差を拡大しただけと言える。
日本は米国のように、家計の金融資産の3割を株式が占めるような国ではない。株高の恩恵は限られるわけだ。
今は日銀が毎月新規に発行される国債の7割(大体7兆円)を発行した後、すぐに銀行から買い取って、
銀行にマネーを流している。これが金融緩和の仕組みだが、それが全然、銀行貸出の増加につながっていない。
銀行は「日銀当座預金」という日銀に持っている預金口座に国債を売って、受け取ったカネを預けたままにしているのだ。
日銀は金融機関に対する貸出支援制度を適用して、住宅ローンや成長企業融資を活発化させようとしているが、
国内銀行の当座預金残高は186兆円となり、記録を更新したという(FT紙、2月18日)。
一方で邦銀は、日本企業が海外に進出するためには積極的に融資している。
日本企業の海外への対外直接投資(FDI)の意欲は旺盛で、去年だけで前年比35%増で
13.2兆円もの額におよんだとWSJ(3月28日)は報じている。対ASEANでは2.33兆円と去年の3倍に伸びた。
アベノミクスで輸出が増えるというのは、今の状況であればまったくあり得ないことなのである。
要するに、原発事故があろうがなかろうが、日本の製造大企業が海外に製造拠点を移していった結果、
円安が輸出増につながるというかつての経済成長モデルは、とっくにもう当てはまらないのである。
結局、ベースアップなどの賃金への恩恵も不十分、銀行の貸出しも上向かない。
これでは、アベノミクスは失敗ではないかと思えてくる。
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