13/12/31 14:12:17.00 bZsgoqzr0
シュワと旅に出た理由が、記憶からすっぽり抜け落ちていた。
ただ、事故の瞬間シュワに車の外の茂みに片腕で投げ出されたのだ。
……そう、俺はシュワに命を助けられた。
52: ◆xKgJRoaYZE
14/01/03 02:15:42.13 MKTA6WP60
シュワ「ともかく俺についてこい、優に会いたいんだろ?」
これが唯一かろうじて覚えてる言葉だ
この一言で俺はシュワと一緒に旅立ったのだった
53: ◆PZGoP0V9Oo
14/01/18 23:09:14.83 OCOiuPLkO
道中立ち寄ったコンビニで肉まんを買う。
なんかだるいよパトラッシュ。
海が見たい。
54: ◆3zNBOPkseQ
14/01/19 11:05:14.29 qSdZ745+O
打ち寄せる波の音。くすんだ白の砂浜。
燦々と照りつける太陽が、生きとし生けるものに平等に降り注いでいる。
俺たちは海に来ていた。
相棒の筋肉ダルマ、そして道すがら拾ったヨークシャテリアとともに。
波打ち際。生者と死者の世界を分かつ境界線。
ノッキングオンヘブンドア。
そして、こんにチワワ。
55: ◆xKgJRoaYZE
14/01/19 16:49:21.09 Tbgl0MdE0
---刹那
響き渡る機関銃の轟音!!
その瞬間に超人的な反射神経でシュワが身を挺して盾になった
シュワの服は穴だらけになっているが、平気な顔で水沢と大吉を抱えて猛然と走り出した
ちなみに大吉とはさっき名付けたばかりのヨークシャテリアのことだ
56: ◆3zNBOPkseQ
14/01/30 20:42:21.82 7Z4DX6LEO
その時それは起こった。
大吉の尻から閃光が走ったのだ。
視界の端に閃くマズルフラッシュ。巻き起こる激しい烈風。
そして―。
ちゅどーん!
後方から凄まじい破壊の音が響き渡った。
銃弾の雨は、ぱたりとやんだ。
残されたのは穏やかな波と風の音だけだった。
57: ◆3zNBOPkseQ
14/02/01 00:37:36.52 EKeiF/mUO
あの時から、28日の歳月が経過した……。
季節は夏。
強い日差しを吸い込んだ砂浜から、陽炎が立ち上っている。
58: ◆3zNBOPkseQ
14/02/01 09:41:02.74 EKeiF/mUO
ぽつんと建つ一軒の店がある。いわゆる海の家だ。
この時節と季節柄、そこそこの客足もありそうなものであるのだが。
そこにいるのは、男二人と一匹の犬だけだった。
59: ◆xKgJRoaYZE
14/02/01 15:34:08.68 JeM7WO2J0
海の家の床下のさらに二重底を開けると、箱詰めの大量の銃火器や実弾が現れた。
男二人が運び出す準備をしていたちょうどそのとき、大型の自動車が建物の正面に到着した。
運転席から降りた女に男二人は親しげに挨拶するのだった。
ちなみに犬は自分の肛門を舐めるのに夢中である。切れ痔を患っているらしい。
60: ◆3zNBOPkseQ
14/02/04 22:59:41.72 L2+K99c8O
「これであのゾンビどもを駆逐できるな」
「……」
「わんわん!(尻がいてぇ……)」
とりあえず今日のところは体を休めることにした。
61: ◆xKgJRoaYZE
14/02/08 15:40:05.44 gFgBQmS70
水沢は寝袋に入り、横になりながら3年前のことを回想していた。
あのゾンビどもが発生しだした頃のおぞましい思い出を。
---その頃、水沢はごく平凡なサラリーマンだった。
ある朝、いつものように満員電車に無理やり押し込まれるように乗り込んだ。
しかし、異様な雰囲気に気付いて周りを見回すと、なんと乗客が全員ゾンビだったのだ。
62: ◆3zNBOPkseQ
14/02/08 20:30:24.81 SidXbmsTO
以前観たとある映画のシーンをふと思い出し、その場をゾンビの振りをしてやり過ごす。
動揺しながらも、いつも通り会社に赴いた水沢。
そこで見たものは……。
63: ◆xKgJRoaYZE
14/02/10 00:15:21.69 Uejj2Qi10
ゾンビ化した課長が襲いかかってきたのだった。
水沢は素早く逃げ出し、会社前のコンビニに立て籠もろうとしたが、タッチの差で課長に追いつかれてしまった。
とっさに手に取ったものをゾンビ課長の頭に叩きつけた!
ピッ・・・鮭弁\380・・・バーコードリーダーの音がむなしく響き渡った。
64: ◆3zNBOPkseQ
14/02/21 23:05:52.63 0fbV3X55O
しんと静まり返った店内。
そこにかつて存在していた、ささやかな人の営みは影も形もない。
水沢はレジの内側のカウンターに背中を預け、じっと床に座り込んでいた。
手には壊れたバーコードリーダーを握りしめたままだ。そのことに気づき、もはや用を成さないそれを投げ捨てた。
「いったい、何がどうなってるんだ……」
65: ◆uStZkrHCmI
14/02/23 17:13:17.56 eoI0uY1r0
動くモノの無くなった店内。懐からセブンスターを取り出し、火を点けた。
疲労、絶望、不安、困惑。それらが紫煙と共に店内に吐き出され、幽霊のように漂う。
ゾンビが煙や火に気付いて襲って来る可能性に思い当たったが、もはやどうでも良かった。
……疲れた。
店内からゾンビで溢れかえる通りを見やると、正常な人間は自分一人ではないかとすら思えた。
「そうだ、家族は」水沢は弾かれたように顔を上げた。
家族の無事を確かめたい。一緒に安全な場所に避難したい。
しかし、目の前のゾンビの群れをどうやり過ごすか。
絶望をブンブンと振り払うように思考を始めた水沢の横から、不意に、声がかかった。
66: ◆3zNBOPkseQ
14/03/08 12:16:24.51 5JtYZJJMO
「おにいちゃん?」
水沢は我が耳を疑った。
まさか、この声は……。
67: ◆xKgJRoaYZE
14/03/14 20:58:00.39 M+BBWwu/0
<Aルート>
妹分の鈴の声だった。
彼女は以前まで耳が不自由というハンディを乗り越え作曲活動をしていたのだが、
哀れに思った水沢が経絡秘孔を突いて耳が聞こえるようにしてやって以来の付き合いである。
<Bルート>
弟分の関羽であった。
水沢とは桃園で義兄弟の杯を酌み交わしあって以来の仲だが、
曹操に捕まったときになぜか女体化してしまったのであった。
<Cルート>
アケミであった。
水沢が足しげく通うイメクラの従業員である。
毎回、制服を着せてお兄ちゃんと妹プレイをしていたのだった。
68: ◆3zNBOPkseQ
14/03/22 00:08:32.11 vBoPZZ7+O
俺の脳内選択肢が、全力で幼馴染みの通い妻ルートを望んでいる。
そう強く訴えかけてくるおのが本能の声を水沢は確かに感じとる。
瞬間、波動関数が集束し、あるべき世界の姿が確定されていく―。
「これだぁぁぁあああッッ!!」
<Aルート>
<Bルート>
<Cルート>
ニア<Dルート>
69: ◆3zNBOPkseQ
14/03/31 21:05:15.40 0F1TC+gmO
振り向けば、そこに奴がいた…。
「I'll be back」
デンデンデデン…エイドリアーン!!
水沢の意識は途絶えた。
妹属性は良いものだ。でもスウさんよりどちらかと言えばユミコが好きです、先生。
70: ◆xKgJRoaYZE
14/04/04 22:25:26.96 XAhTycir0
水沢が驚きとともに目を覚ますと、大量の寝汗をかいていた
どうやら回想しながら、うとうとしてしまったらしい
「よし、今日からゾンビどもへの復讐戦が始まるのだな」フンドシをキュッと締め直す水沢であった
71: ◆3zNBOPkseQ
14/04/13 09:36:03.92 /qsWYER0O
丘を越え行こうよ、口笛吹きつつ~。
水沢たちは意気揚々と愛車のジープを駆り出した。
雲一つない青空。遠くにうっすらと虹の橋が架かっている。
幸先が良さそうだった。