06/11/18 05:54:31
カルヴァンの神学は「福音主義」(端的に、聖書主義、信仰主義)といわれるものである。
「予定説」ばかりが強調されるが、それはルターをはじめ中世末期のキリスト教思想家に
ある程度共通に見られた傾向であり、カルヴァンの著作を読めばわかるように、
彼が「予定説」をことさらに教義の中心においた箇所を見いだすことは難しい。
カルヴァン神学(つまりはプロテスタンティズム)の中心内容はいうまでもなく福音主義である。
人間の自己の自覚(人間が有限・不完全であることの自覚)も人間の救いも、
ただ神という基準によってのみ可能であり、地上の完全でも正しくもない権威、
伝統・伝承、制度(具体的には教皇)によるのではない。
なぜならあらゆる人間的なものは、どれほど正しく善に見えても不完全、
有限、さらには無価値であるからである。このように人間を、
個において、一人一人において、その存在の根底からあくまで徹底的に理性的に追求するという態度は、
人間を「人の間」とする東洋の関係主義の伝統とは大きく異なり、
この精神こそが西欧近代をはぐくむことになったのはいうまでもない。