08/07/12 09:41:39
香山リカの名言(長文)を読め! ギャッハッハ
一九九四年、朝鮮民主主義人民共和国の主席、金日成が突然亡くなったとき、
診察室の中でそれを伝える待合室のテレビのアナウンサーの声を聞いた私は、診察中であったにもかかわらず、
興奮して目の前の女性患者さんに言いました。
その人とは長いつき合いで良い関係ができていましたから、そういう雑談も許される雰囲気だったのです。
「たいへんだ、金日成が死んだみたいだよ! 北朝鮮はどうなるんだろう?」
すると、自分が職場の人間関係にいかに苦労しているか、といった話題を語っていたその女性は、表情も変えずにこう言ったのです。
「まあ先生、そんなことどうだっていいじゃないですか。それより、私の職場の同僚なんですけど、先日も……」
その人は解離性障害そのものではありませんでしたが、精神的なある基礎疾患により、
ものごとをなかなか社会的な広がりの中でとらえられない、といった状態にありました。私は「この人にとっては、
金日成の死去より今の職場での小さなトラブルのほうが重要なんだな」と驚き、「しかし、この人のリアルな日常にすぐ影響を与えるのは、
たしかに職場の人間関係のほうかもしれないし」と思い直したりもしながら、
「広がりの中でものごとをとらえられないという病」についていろいろと考えたものでした。
ところがそれから十年後、とくに若い人たちにとっては、「北朝鮮の首領の生死より、
自分の内面の問題が重要というのは、あたりまえのことになっている感があります。
香山リカ『生きづらい〈私〉たち心に穴があいている』(講談社現代新書)(p.56)
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