10/06/17 13:22:16 0
自由主義も功利主義も、道徳の「科学」を目指した思想という部分では出発点は近い。
近代に入って自然科学が飛躍的な発達を遂げ人間社会に大きな影響を及ぼしたのを見て、
ミルやカントは道徳哲学においても同様の発展を望んだ。(それぞれ『功利主義』
『人倫の形而上学の基礎付け』の冒頭で同じようなことを言っている。)
近代自然科学というのは、自然現象の法則性を単純な数式に表して、さらにはそれを
応用して各種工業に役立てることができる。契約論系の自由主義も功利主義も、まずは
幾何学の公理のごとき原則(幸福最大化原則、無知のベール)から始めて、道徳の
諸ルールを演繹して行くという形を取っていて、それがシンプルなので応用もしやすく
ソーシャル・エンジニアリングに即役立てることができる、みたいな形になっている。
これに対して共同体主義は、人間の道徳や正義といったものは、そのように単純な式など
へは「還元」(reduce)されえない、という啓蒙主義以来の風潮自体を批判をしているし、
主張もシンプルではないので、直接的に政治に反映させるのはちょっと難し部分がある。