10/03/25 22:41:34 0
花田自身は事ある毎に、「ユートピアの誕生」はユートピア批判だと言ってますね。
《単純再生産の表式でユートピアをとらえ、官僚の空想を嘲笑している『復興期の精神』のなかのわ
たしの一文を、ユートピア肯定論だと誤解し、わたしに生産力論者という見当違いなレッテルをは
ったのは、吉本隆明自身ではないか。》(「大菩薩峠」と戦争責任)
《ユートピアというものを、単純再生産の表式によってとらえ、主として企画院の役人たちにたいす
る皮肉をこめながら(…)とかいたことがある。経済学のイロハを知っている人物ならだれの眼にも
、そういう課題に実現の見こみのないことはあきらかなはずであって》(アジア・インターナショ
ナル)
だけど、花田の終生の信奉対象だったソ連について、その経済の社会主義的計画性を讃えている文
とか読むと、ユートピアを単純再生産表式で表すあの部分はいかにも花田的でもある。だからあの
発言はあまり鵜呑みにできないと思ってました。そこで偶々前記のサイトで花田の戦時中の論文を
読んで、あのなかに「ユートピア」という語彙こそないものの、例えば「ブロック内の富の開発による
自給自足経済」というのがある。そこは花田がかつて書いた「政治的な島」での「単純再生産」に合致
する。やっぱり似たことを他の論文に書いてるんですよ。語彙が別なだけでね。