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総理大臣の辞任【佐藤優の地球を斬る】
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筆者は、今回の安倍政権の自壊は、表面上、「安倍氏の権力に執着するハングリー精神が足りない」という
ような類の個人的資質によるように見えても、その背景には重大な国家戦略の問題が潜んでいると思う。
それは小泉改革からの大きな方向転換と密接に絡んでいる。小泉政権は新自由主義を基軸とし、靖国参拝
によるイメージ操作に代表される保守主義的要素を権力基盤を強化するために取り入れた。
これに対して安倍氏は、「美しい国」「戦後レジームからの脱却」など本格的保守主義を日本に根付かせようとした。
同時に、新自由主義によって生じた格差を安倍氏は本気で是正しようと考えた。
保守主義とはゼニ、カネではなく、伝統や同胞意識をたいせつにするので、弱肉強食の新自由主義とは本来相
いれなかったのである。
圧倒的に新自由主義に軸足を置いた小泉路線を静かに脱構築して、保守主義を基軸にする政治を安倍氏は
日本に定着させたかったのだと思う。
しかし、このような大きな路線転換を行うためには思想が必要である。
小泉改革においては、単純ではあるが、「聖域なき構造改革」「官から民へ」という経済主体が行動する上で
障害になる要素を極力除去するという思想があった。
「美しい国」は美学的観念で、「戦後レジームからの脱却」は何が戦後レジームであるかについて、国民的見解の
一致がないところでは、思想にならなかった。
思想が欠如したところで具体的な国家戦略を定めることはできない。
具体的国家戦略がなければ国民に対して政策転換を説明することもできない。
このような状況は、全体主義的体制から脱却し、国家を活性化させようとしたが、その思想を確立できず、
政治エリートが権謀術数に明け暮れ、国民から見放され、自壊したソ連末期を思いださせる。実に嫌な感じだ。