07/09/04 12:39:22 0
>西部邁が書いた文章や話したことが読めるウェブページがあれば教えて下さい。
国民の道徳
URLリンク(www.tsukurukai.com)
「著者コメント 西部 邁 (にしべ・すすむ)
私は戦後育ちの第一期生です。だから、道徳なるものを、あからさまに肯定
する方向で物を書いたり、しゃべったりすることは禁句であると、いつの間
にか思わされてきました。そのくせ、自由に始まり平等を経て博愛にいたる、
フランス大革命以来の決まり文句と化した価値観だけは、家庭に始まり学校
を経て議会にいたるまで、半世紀余にわたってしつこく復唱され続けてきま
した。
自由という理想は、統制という現実に基礎づけられていなければ、単なる空
語です。また逆に自由という理想に率いられていなければ、統制という現実
は単なる拘束です。そこで平衡をとること、つまり自由と統制の相克のなか
から秩序の感覚を、平等と格差の葛藤から公正の意識を、博愛と競合のそれ
からは活力にみちた態度を見つけだしていくこと、それが精神の力強さだと
考えられています。漢語で「徳」といい英語で「ヴァ-チュ」という、こう
した精神の平衡術こそが大事なのです。
しかし、「徳」は、一個人はおろか一世代で身につけられるような、生易し
いものではありません。そんなことができるような立派な能力を、人間は持
ち合わせていないのです。歴史つまり持続せる時間の道筋において、厖大な
数の人生や時代が、「徳」をめぐる困難な営みをつうじて、少しずつ精神の
平衡術を残してきました。それらを蓄えたのが伝統です。伝統から離れれば、
人生も時代も転倒したりします。ある哲学者が言ったがごとく、「左翼にな
るのは、右翼になるのと同じく、人が莫迦になるための早道なのである」。
これが道徳、徳を論じるに際しての私の最も基本的な考え方です。」