07/04/01 22:24:30
『君自身に還れ』177頁で池田はこう云ってるね。
《そうなんですよね。宇宙のこと考えていたのに、引っ繰り返ってメビウスの帯みたいに裏側に出てしまった。考えていたのは自己だったってことでしょう。》
つまり、宇宙や永遠性について、言葉を紡いでいると、その言葉を紡いでいる自己が気になってきた。
これは変化なんだろうけども、もしかしたら、そのように変わってきたのは病に冒されていったことが原因ではなかったのかな、て推測もしてしまう。つまり、死を意識したからではないか。
死をリアルなものとして意識したとき、今ここで宇宙や永遠について思考している自己はいずれ消滅する、てところに行き着いたのではないか、ということ。それは重大な転換点だったろう。
精神の一性という立場からは、個体の唯一性は問題にならない。事実池田はその一性のほうを中心に考える人間だった。それが、晩年はその反対概念である多性が気になってきた。
それはつまり個体の唯一性について考えはじめるということで、大峯との対話ではそっちのほうへ目を向けるところと、従来からの思考―精神への指向―が混在して出てきてますね。
他と交換不可能な〈私〉というのを意識せざるをえなくなった。〈私〉の消滅がそれを意識させた。
生の条件が思考を左右する、真理への眼差しを左右する、てことを証明する話だよね。