07/04/30 10:50:52
>>89
戸坂は全集もってるけど、その本買って改めて読んでみたよ。
戸坂自身は、批評(思想と風俗)と時論(現代日本の思想対立)との中間的著作と
位置づけてるけど、1934年頃~1937年までの日本の思想・政治状況がよくわかる
評論集だと思う。
従来の日本近代史の議論だと、この時期は31年の満州事変に始まる15年戦争の
時期=軍国的ファシズムの全盛期という評価だけど、戸坂のこの著作を読むと、
軍国主義的風潮と対抗する自由主義や社会民主主義的な潮流が意外に活発だった
ことに気づかされた。
政治的には軍部の発言権はかなり増大し、それと絡んだ既成政党の動向も目立つけど、
他方では社会大衆党の議席増加が示すように、国民の中には反戦・反ファシズムという
潮流が根強くあり、また政治・社会体制の改革への期待も大きかった。
戸坂が『日本イデオロギー論』で述べてるように、自由民主主義というのは、日本近代の
隠れた基調でもあったという指摘が改めて思い出される。
どうも37年7月の日中戦争の開始以降、戦時体制が急速に確立して、言論への弾圧も
一気に強まったように見える。この著作も37年12月頃の評論が最後となっている。
この著作が扱っている時期というのは、日本の政治・社会にとっては重大な岐路だった
ように思えるけど、そうしたことを示す歴史的な史料としても、この著作は価値をもっている
と思う。