06/04/19 23:16:25
現代の法哲学者・笹倉秀夫の本から象徴天皇制について引用してみる。
(以下、『法哲学講義』(東京大学出版会、2002)19章より)
天皇は立憲君主でない。なぜならば、「立憲君主制下の君主は、形式的にはなお統治権や元首
性を保持しつつ、実際の政治を国民代表に委ねているのだが、天皇はそうした権限を保持して
いないからである。」「「国王は君臨すれども統治せず」というのが立憲君主制であるが、天
皇はもはや「国王」ではなくそれゆえ「君臨」していない」。「象徴天皇制をしばしばイギリ
スの立憲君主制の対応物だとする議論があるが、これはやはり正確ではないのである。」
では、象徴天皇とはいかなる存在なのか。
「法的に見て天皇は、君主として国民の上位には立っていない、むしろ、「固有権」を持たず
国民主権に服しているのであるから、国民相互間の名誉毀損以上の保護を受ける必要はないし
畏敬の対象とはなりえない。この点で、たとえば皇室典範が「陛下」などといった秦の始皇帝
にまつわる敬称を規定しているのは、奇怪という他ないだろう。」
「ヨーロッパの立憲君主や実権ある大統領ですら受けていない特別扱いを、象徴天皇が受ける法
的根拠はないのである。そしてここでも、日本の「伝統」…や、象徴天皇をめぐる「国民意識」
ないし既成事実が引き合いに出されてはならない。それらが前提にしている、「神聖な天皇」の
否定の上に戦後日本の再出発があり憲法があるのだからである」。
「象徴天皇の「尊厳」とは、結局「ドイツ連邦大統領以下的」な機関のそれなのである。そのよう
なものとして、象徴天皇は日本国憲法が「発明」した、世界にただ一つの特異な公務員としてある。
この、「世界にただ一つの特異な公務員」という視点こそが、象徴天皇にまつわる神秘主義から、
われわれが解放される決定的なカギなのである。」
結論・・・法哲学的には、天皇は君主ではなく公務員。