07/12/12 21:08:19 EIxiZN5H
>>326
伊勢物語などでもそうだが、この時代の物語文学で
男が女を「盗み出づ」というのは、多くの場合、現代で言うところの「駆け落ち」と考えて良い。
だからここでも、「誘拐」ではなく、「駆け落ち」と考えればよい。
その男は内舎人であった。もともと、家柄も人品もいやしからぬ若者がつくポジションである。
いや、むしろ将来が期待できる貴公子、といってよい。そんな若者が、
「せちにきこえさすべきことなむある(どうしても申し上げたいことがあるのです)」
と、大納言の姫君に繰り返し申し上げたのである。
何を申し上げたいのか。容易に見当がつくだろう。
しかも、その申し出に、「あやし」と言いつつも、姫君は、応じたのである。
応じて、姿を見せたのである。
未婚の姫君が男性に「見る」「会う」ことすなわち「結ばれた」ことを意味する時代だ。
内舎人に対する姫君の好意は明らかと言えよう。