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『私の履歴書』 近藤道生(博報堂最高顧問) ⑮ 日本経済新聞 2009年4月16日 朝刊
横浜税務署長を拝命 米軍将校「護身用の銃持て」
最初は理財局国庫課、翌年、地方財政委員会事務局兼務となった。そのときの上司に長く
国会議員を務めた奥野誠亮さんがおられた。
兼務は五カ月で解かれ横浜税務署長を命じられた。その直前にGHQ(連合国軍総司令部)に
よって申告納税制度が導入されたにもかかわらず、猛烈なインフレの影響もあり徴税率は最悪。
そこでGHQは更正・決定という制度を活用せよと迫った。
申告してもしなくても税務署が納税者の所得を調べ、納税額を決める制度だ。当然、不服が
出る。それを押し切ってでも徴税率を上げようとGHQは考えていた。
着任間もなく、税務署に米軍の車が横付けされた。降りてきた数人の陸軍将校が私に書面を
突きつける。拳銃携帯許可証だった。七人の日本人が、ある人物に頼まれて私を殺しにくるので
護身用の拳銃を持てと英語で告げた。
徴税強化に対する反発が、こんな形で出たのだろう。前年には初めて密造酒を摘発した
神奈川税務署の間税課長が、帰途を暴漢に襲われ殴り殺されていた。しかし私は拳銃を持た
なかった。