07/09/27 02:16:12
エッセー集だけど、白洲正子の『遊鬼』(あそびおに 新潮文庫)を今日買ってたら、
「お公家さん」ってタイトルの10ページくらいの随筆があって、面白かった。
彼女が11,2歳の頃(大正10年くらいか?)、父の伯爵・樺山愛輔といっしょに
京都の冷泉家に訪問したそうだ。そのころ樺山家と冷泉家は、間に柳原家を通して
姻戚関係にあり、当時あの柳原白蓮の不倫騒動で、とばっちりを受けたくない冷泉家の
相談役を樺山愛輔が引き受け、その用件で訪問したわけだが、
薄暗い玄関先でしばらく待っていると、書生さんが応対に出てきて、
玄関の隣の座敷で待っていた当主に、襖を開けると
「地下人(じげびと)が参りました」と報告したそうな。
これには父の愛輔も苦笑せざるを得なかったそうだが、少女だった彼女も、
いまだに平安朝のコトバが使われてるのでおかしかった、と回想している。
ちなみに、通された座敷でも、ごく自然に、当主が床の間を背にして座り、
彼女たちは下座にいて、挨拶を交わしたそうだ。また、当時の冷泉家は
今よりずっと逼迫していたらしく、どこもかしこもかび臭く、天井には
雨漏りがし、畳もじめじめして気持ち悪かったとのこと。家族も奥のほうに
引きこもっているのか、邸の中はしんとして物音ひとつしなかった、と述べている。
その他、当時の公家華族がとても貧しかったというエピソードや、したたかな生き方に
一貫して批判めいた視点で書いているが、総じて興味深かったので、ぜひ
すーぐ読めちゃう長さなのでお勧めです!