09/11/21 01:22:18
ラテン語の第三変化名詞は、印欧語の子音語幹名詞と i語幹名詞が合流して
登場してきたカテゴリー。
ラテン語の子音語幹名詞は基本的に e語幹と考えて間違いない。
gens の属格 gentis < *gent/e/s, 同与格 genti: < *gent/e/i, 同対格 gentem < *gent/e/m
のように、gent- なる語根と格語尾の間に語幹のテーマ母音/e/が悉く現れる。
このような子音語幹名詞を e(母音)語幹名詞に作り直したラテン語は、
そういう新たな挿入母音を持たないギリシャ語とは扱い方が決定的に異なる。
もっともラテン語形があらゆる点で新しい改新形とも言い切れない。なぜなら属格語尾 *-es は
古リトアニア語形と一致するから。(vanduo 「水」の属格 vandens は古語で vandenes;
斜格語幹 vanden-, 主格語幹 *vandon-φ > *vando: > vanduo )
リトアニア語と全く同様にラテン語でも子音語幹と i語幹の融合が起きたから、
奪格形も子音語幹のそれ -e < *-ed と本来の i語幹のそれ -i: < *-i:d の間に混用・揺れが
生じているだけのこと。