08/03/28 06:25:07 0
国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。信号所に汽車が止まった。
向側の座席から娘が立って来て、島村の前のガラス窓を落した。雪の冷気が流れこんだ。娘は窓いっぱいに乗り出して、遠くへ叫ぶように、
「駅長さあん、駅長さあん。」
明りをさげてゆっくり雪を踏んで来た男は、襟巻で鼻の上まで包み、耳に帽子の毛皮を垂れていた。
もうそんな寒さかと島村は外を眺めると、鉄道の官舎らしいバラックが山裾に寒々と散らばっているだけで、雪の色はそこまで行かぬうちに闇に呑まれていた。
・雪景色、銀世界はどこにもない。
・視点は客車の中に固定され、「島村」の主観と同化している。
・「島村」は、雪の季節にこの土地を訪れるのは初めてだが、初夏に 1 度来ている。
したがって、冒頭文は全くの新発見でもない。冬は雪が深いといった情報はもっていたはずだ。
「国境の長いトンネルを抜けると (予想したとおり) 雪国であった。(なぜなら) 夜の底が (雪明かりで) 白くなった」
こういう解釈が適当と思われる。