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>>508
「さて」とおじいさんはすっかり夜もふけると(=遅くなった時に)言いました、「もう床
に就こうじゃないか。今夜はみんなきっと良い夢が見られるじゃろうて」「どうぞお先に」
と娘さんは言いました、「私にはもう少しすることがあります」「いやいや、ありゃせんよ。
あんたは休まなきゃならんよ、娘さんや」「私は大丈夫です、本当に。あなたたちのために
もう少し布を織りたいだけです」娘は自分の白く細い手に視線を落とした。「でもお願いが
あります。私が中にいるときに仕事部屋の扉を決して開けないと約束してほしいのです」
「え?あんたはわしらに機を織っているところを見られたくないのじゃな」「その通りで
す。約束してください」
その夜、老夫婦は娘さんのことが余りに心配になったので眠ることが出来なかった。「おじ
いさん、」とおばあさんは言った。「機織の音を聞いてください。今夜は、なんだか音が違
うようですよ。なんかとても悪い予感がしますよ」おじいさんも同じ気持ちでした。「わし
は見に行くよ」とおじいさんは起き上がりながら言いました。「それはだめですよ。あの娘
さんに約束したでしょう」しかし、おじいさんは娘さんのことが余りに心配だったので約
束もおじいさんを止めることが出来ませんでした。おじいさんは爪先立ちになって仕事場
に向かい、扉をほんの少しだけ開け、中を覗きました。