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>>147-148
奇妙なことだが、この階級制度には社会を安定させるというさらなる利益があった。
人はある階級に「生まれ」つくものだと一般に考えられていた。したがって、下層階級
に生まれついたものが中産階級に成り上がることや、中産階級に生まれついたもの
が上流階級に加わることは、彼らの財政状況がどのように変化しようとも、不可能で
あった。このことはもちろん、出世しようという野心を抱く者に大変な不満をもたらし、
逆にまたそれぞれ別の階級の内部で大いなる自尊心を生んだ。下層階級の成員たち
は自らの境遇に心から誇りを持っていると公言し、いわゆる社会的地位の高い者たち
を軽蔑の目で見た。そして同じ階級で上の階級を気取る者は誰でもすぐさま仲間外れ
となったのであった。今では階級制度は根絶され、あらゆる階層の人々が良い教育を
受けたり、勤勉と努力を通じて自らの望むあらゆる社会的地位を希求したりすることが
可能であるが、イギリスではある階級に属するという観念が、それにともなう自尊心の
感覚とともに残っている。しかしながら、奇妙な逆転現象であるが、今日の中産階級や
上流階級の若者は労働者階級の言葉遣いや振る舞いを真似するという傾向を持って
いる。それらは退屈で面白みのない上の階級よりもはるかに「クール」であるとみなさ
れているのである。