08/07/05 12:58:12
皆さんは、というより世間一般は、漱石を過大評価しているのではないのでしょうか?
わたしはかつて高校生だった頃、バイトで稼いだ金で江藤潤「漱石とその時代」を買い、
夢中になって読み込んでいました。その当時は、漱石のロンドン滞在の記録を感心して
読んでいたものです。でも就職していろんな目に会ううちに、考え方が変わってきたの
です。特に大きかったのが、南方熊楠の伝記「縛られた巨人」を読んだことでしょうか。
漱石と南方は大学予備門時代の同級生です。南方を乗せた船がロンドンから日本に帰って
くる際に、漱石を乗せた船がロンドンに向かおうとして、インド洋ですれ違ったはずなの
です。両者がロンドンで会っていたら、漱石にとってもどんなに精神の滋養になったことか。
でも実際には2人はすれ違いで残念でした。この2人のロンドン滞在記を読み比べてみると、
あまりの違いに、あ然とさせられます。
性格の違いや専攻していた学問の違いもありますが、どこからどう見ても、南方のほうが人間的
に大きかったように思うのです。漱石はロンドン滞在時には、当時のイギリス社会を幅広く見て
歩き、いろんな体験を積んでいたわけではありません。下宿と個人教授してくれる人の住居を往復
し、途中の古本屋を覗いていただけです。それにもかかわらずこれほど過大評価されている理由は、
後になって小説を書いことの他に、最初の英文学専攻留学生であり、英語教師のシンパができやす
かったからだと思います。