07/06/12 09:32:55
【千変上海】繁栄の足元流れる汚濁水
時事速報の中の「中国政策トレンド」というコラムで、富士通総研上席研究員の柯隆氏が次のように書いている。
「集合住宅に住む友人の家を訪ねると、階段や廊下などの共有部分の照明はほとんど壊され、床も掃除されておらず汚かった。しかし、一歩家の中に踏み込むとぴかぴかに輝いている」
柯隆氏は「自分さえ良ければ」という中国人のマナーの悪さをこう嘆くのだが、こうした公共心の無さがいまや上海の生命線をも断ちかねない状況になっていることを最近になって知った。
上海の黄浦江といえば、言わずと知れた上海の「母なる川」である。租界時代の西洋風建造物が並ぶ「外灘(バンド)」は黄浦江沿いにあり、年間600万人もの観光客が訪れる。
その黄浦江の最新の水質検査の結果を目にしてゾッとしたのである。
専門家に分析してもらうと、まず恐ろしいのは自然の川に存在してはならないヒ素やセレンといった重金属が含まれていたことだ。さらに洗濯排水など生活排水が大量に川に垂れ流されたことを示すABS数値が異常に高いうえ、
屎尿(しにょう)投棄を示す大腸菌の数が1リットルあたり12000個もあった。
顔をしかめたくなる数値はまだまだあるのだが、さらにもうひとつあげるとすれば総窒素含有量が1リットル当たり4・8ミリグラムもあったことだろう。
黄浦江の上流にあたる太湖で5月下旬、水質汚染が進みアオコが大量発生して太湖を水源とする無錫市の水道水が臭くて飲めなくなったことがあった。その時の総窒素含有量が4ミリグラム。
これでも日本の富栄養化の目安である限界値の20倍なのだが、黄浦江はそれよりさらに0・8ミリグラムも多かったのである。
これほど汚れきった黄浦江を、上海市は水源とし外灘近くには取水口もある。もちろん市当局も黄浦江が水道用水に向かないことには気づいており、比較的ましな長江(揚子江)からの取水を始めているが、それでも上海市の水道水の7割近くは
まだ黄浦江の水を使っている。