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星を見るもの、、、、
1989年7月のある朝、ナーマ・ゴレン=インバル教授の率いるイスラエルの考古学者グループが、ヨルダン渓
谷で発掘作業に当たっていた。この場所の地質学的特性を明らかにするため、掘削機が二
つの深い溝を掘った。シャベル一般分ずつの土を地面に積み、骨や遺物を探し出すのだ。
だが、一つの山の中に、まったく予期せぬものが見つかった。それは、カンナがけされ、
研磨された木の厚板で、長さ10インチ(約25センチ)、幅はその半分。どう見てももっと
大きな厚板から切り取られたもので、厚板の半分はやや凸状になっており、カンナがけや研磨
はされていないようだった。
このれ一体何がそんなに奇妙なのか?それが発見された地層が今から50万年前の、北京
原人の時代だったということだ。これはホモ・エレクトゥスと呼ばれる原人、つまり、最初の人
類の一種だ。おそらくその脳容積は現代人の半分ほどだった。だが彼らは、この研磨され
た厚板を作ったのだ。ゴレン=インバル教授自身、まったく説明がつかないことだ、と認めた。
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厚板の写真は、ベイジェントの「古代の痕跡」(1998)に収録されている。これは、実に幸
運だった。というのも、ベイジェントがゴレン=インバル教授に電話をした時点で、すでにその写真
はたった一枚のポジフィルムを残すのみとなっていたのだ。彼がその写真を収録出来たのは僥
倖といえる。というのも、その厚板は―無論自己なのだが―ヘブライ大学遺跡保全部によ
って破壊されてしまったのである。
これはそれ自体、耳を疑うような話だ。破壊された?―-現代考古学史上、最も重要な発
見となりうる木の板が?それは、、、、つまり、ホモ・エレクトゥスが今から80年前に、家族を乗せ
てフロレス島に渡る筏を造る事ができたからには、彼は我々が想像するよりもはるかに知的だ
ったに違いないという仮説を裏付けるものになっていただろう。オクスフォードのピットリヴァース博
物館のリチャード・ラジュリーは、その問題を簡潔に述べている―。
「先入観のために、その時代の考古学のドグマと一致しない証拠は常に排除されてきた。そ
の結果、同じイスラエルのハヨニム洞窟遺跡から出土したものでも、上部旧石器時代の線刻入りの骨
は当たり前のように認められ、中部石器時代の線刻入りの骨は同じく当たり前のように否
定されている。中部旧石器時代の骨のほうが、上部旧石器時代のものより複雑な印が刻ま
れていても、である」。上部旧石器時代は4万年前から1万年前までで、中部旧石器時代は
20万年前から4万年前までだ。
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これはまるで正気の沙汰とは思えない―4万年以上前には、人間には彫刻は不可能だった
と考えられているから、彫刻の入った骨は認められない、とは。そのドグマを改訂するほう
がはるかに理性的というものではないか?
ラジュリーは正統派の考古学者だが、彼の本「旧石器時代の失われた文明」(1998 邦訳「石
器時代の文明の脅威」)には、このような例が満載されている。中でも最も驚くべき例は、
おうし座の(7姉妹)と呼ばれるプレアデス星団だ。
彼によれば、この星は北アメリカ、シベリア、オーストリア先住民の間で(7姉妹)と呼ばれてい
る。これは偶然ではありえない。もしそれが偶然ではないとしたら、それはオーストラリに人間
が定住するころから(7姉妹)と呼ばれてきたことになる。それは今では4万年前以上と
されているが、ほとんどの人類学者に言わせればはやすぎる見積もりなのだ。
さらに厄介なのは、オーストラリアはヴィクトリアのモナッシュ大学、ピーター・カーショーの主張だ。彼によれば、
オーストリアに人間が定住したのは14万年前かもしれないという。彼の仮説の根拠は、今から14
万年前に突如として炭素が増え、同じくして突如として花粉が減少しているという事実だ。
カーショーは、その原因は人間の火の使用ではないかと考えた。
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1996年に発見されたものはさらに厄介だ。西オーストラリアのウーロンゴン大学、レスリー・ヘッド博士率い
るチームが、西オーストラリアのジンミウム遺跡で、「岩面画と膨大な円石彫刻の制作に用いられた道具で、
17万6000年前のものと考えられる」ものを発見したのだ(「ザ・タイムズ1996年9月22日
日付」。もしそうなら、我々の先祖はほとんど20万年も前から、プレアデスを(7姉妹)と呼
んで来たことになる。
とはいうものの、たとえそれが4万年前だとしても困ったことには変わりない。もしそ
うなら、我々の先祖は、洞窟に住んで棍棒で獣をひっぱたいていたとされている時代から、
星を観測していたことになるからだ。ジョルジョ・デ・サンティラーナとヘルタ・フォン・デヒェンドの「ハムレッ
トの水車」(1969)によれば、「星伝承」は文明以前に遡るもので、歴史の前から何者か
がすでに星座に名前を付けていたという。だが、サンティラーナのいう「歴史の前」とは何を意味
しているのか?どうやらそれはホモ・サピエンスが出現したという紀元前8000年以前を指してい
るらしい。スタン・グーチの「夢の都」でも、(7姉妹)について長々と論じられている。同書の
副題は「我等の文明を形成したネアンデルタール人の豊かな遺産」。
1989年に出版されてすぐに私はそれを読んだのだが、正直言って途方に暮れた。グーチに
よれば、ネアンデルタール人は複雑な文明を持っていたのだが、その文明を築いたのは煉瓦とモル
タルではなく、「夢」だったという。まったくわけがわからない。文明というものは、自然
の驚異から身を守る術ではないのか?
50:、
08/05/21 21:04:41 uqTiLED6
暴風雨やサーベルタイガーから身を守るのに、夢はあまり役に立ちそうではない。私の印象に
残ったのは、ネアンデルタール人が10万年前に大量の赤鉄鉱を掘り出したという事実だ。
だが、それだけでは文明とはいえないのは確実ではないか?
最近になってこの本を見返したとき、私はカバー裏の宣伝文句の最初の数行に惹きつけら
れた。「本書は、最初の氷河期とそれに続く現代人の出現の時代(3万年ほど前)以前には
文明の名に値するものは何もなかったという、正統派の観点に挑戦するものである」。これ
はまさに、ハプグッドのいう10万年前の化学と同じではないか。
グーチはまず、ネアンデルタール人とアメリカ先住民を比較する。
「紀元前2000年より前に、この北アメリカ先住民諸族は、機織、テント、武器、医薬品、音
楽、そのほかさまざまな技術を知っていた、、、、、、またこのころまでにはすでに複雑な政治
と、豊かな文化的・宗教的伝統、膨大な民間伝承を持っていた、、、、、部族の中には、日々
の多くを複雑な宗教儀礼に費やすものもあった。今日の正統派ユダヤ教徒やムスリムに似ていな
くもない。だが、ここで強調しておかなくてはならないが、これらの複雑な先住民が、実
は文字を持っておらず、また恒久的な住居を建てたこともないのである」。
グーチは問う、もしも疫病や何らかの破局によって彼等が滅亡していたら、どうなってい
ただろうか?考古学者は彼等の骨を発見し、「未開人」として一蹴していただろう。
現在我々は、アメリカ先住民の「未開性」は自ら選択したものであることを知っている。
彼らは単に自然に近い生活をしているだけではない。自然と共生的な関係を持っているの
だ。「アトランティスからスフィンクスへ」では、ホピ族と同様にシャーマン的だ。人類学者エドワード・ホールは、
徐々に彼等の生活様式を理解するようになり、そしてそれこそが西洋文明に対する完璧な
代替物であると認識するようになった。多くの点で―たとえば、キチェ族族の暦だ―それ
は我々西洋の生活様式よりもはるかに豊かで複雑なものだ。それを「右脳文明」と呼んで
も間違えではないだろう。彼らは自らそのような発展の方向性を選択したのだ。
51:、
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(7姉妹)について、グーチは次のように述べている。「プレアデスは、過去と伝在を問わず、最
も高度なものから最も原始的なものまで、地球上のあらゆる文化が認識し、名を付けた唯
一の星座である」。そして彼はオーストラリアのアボリジニ、ワイオミングの先住民、そして古代ギリシア
の伝説の類似を指摘する。
ギリシアの伝説では、狩人であるオリオンが6人の乙女とその母を森の中で追いまわす。ゼ
ウスが彼女たちを哀れみ、全員(オリオンを含め)を星に変える。オーストラリアの伝説では、この
狩人はウルンナと呼ばれ、7人の乙女のうち2人を捕らえる。だが彼女たちは木の上に逃れ、
それは突然成長して天に達する。そこで彼女たちは永遠に暮す。ワイオミングの先住民の伝説で
は、7人の乙女は熊に追われ、高い岩に登り、それが成長して天に達する。
1989年、グーチはオーストラリアのアボリジニとワイオミングの先住民との間には2万年の隔たりがある、
と述べた―その時点では、現代の人類学者がすぐにそれを4万年にまで延長するなどと
は考えてもいなかったのだ。次にグーチは(7姉妹が)アステカ、インカ、ポリネシア、中国、マサイ、キクユ、
ヒンドゥ、古代エジプトの伝説でも同様に重要な役割を果たしている、と述べる。プレアデスに
対するこの全世界的な関心は、それが極めて古い、そしてかつて中心的であった文化に発
祥することを示している、という。
グーチによれば、その文化とはネアンデルタール人のものである。われわれとしては信じられない、
というか、我々自身の祖先であるクロマニオン人を推したいと思うかもしれない。だがグーチは、
ネアンデルタール人の洗練された知性を証明する印象的な証拠を集めている。たとえば彼は、スイス・
アルプスのドラッヒェンロッホを例に挙げる。そこでは、洞窟の中に7万五千年前の森の祭壇が発見さ
れている。分厚い石板の蓋のついた長方形の石櫃の中に、7つの熊の頭骨が発見された。
その鼻面は洞窟の入り口を向いていた。洞窟の後ろの壁には壁がん(西洋建築で壁や柱の
垂直面につくったくぼみ。彫刻などを飾る)があり、そこにさらに6つの熊の頭骨があっ
た。
52:、
08/05/21 21:08:16 uqTiLED6
すでに見たように、7はシャーマニズムと関連した数だ。ドラッヒェンロッホ洞窟は明らかに際議場だ
った―いうなれば教会だ。さらに、エリアーデが言うように、世界的に熊は月と繋がってい
る。そしてこのことは、洞窟内の頭骨の総数が13―-太陰暦の月の数であることから推測
できる。このことと、他の多くの手がかりに基づくグーチの推論によれば、ネアンデルタール人の宗
教は月崇拝に基づくものであり、ネアンデルタール人こそ最初の「星を見る者」であったという。
彼によれば、サンティラーナの言う春秋分点歳差の知識はネアンデルタール人に由来するという。
「教会」があるということは、そこには神官かシャーマンがいたということだ。これによって、
ジグソーパズルのもう一つのピースがはまった。ネアンデルタール人には独自のシャーマン、「魔術師」
がいたに違いない。世界中のシャーマンがそうであるように、彼らもまた狩猟儀礼において重要
な役割を果たしていたのだ。月の女神であるディアナが女狩人であることは偶然なるだろう
か?彼女もまた、ネアンデルタール人からの遺産なのだろうか?
53:、
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ネアンデルタール人の文明
1989年にグーチの本が世に出て以後、ネアンデルタール人がテクノロジーを所有していたことを示す証拠
も山積している。1996年、タラゴナのロビリ・イ・ビルギリ大学の科学者たちが、バルセロナの北方
カペラデス近郊で15基の炉を発掘した。エウダルド・カルボネル教授は、ネアンデルタール人がこれまで誰
一人想像もしていなかったほどの高度な技術を持っていたことが証明された、と述べた。
彼によれば、ホモ・サピエンスはクロマニオン人を飛び越す「進化的跳躍」ではなく、ネアンデルタール人か
らの穏やかな一歩である。発掘された炉のそれぞれは、その大きさにしたがって特定の用
途を持っていた。あるものはかまであり、あるものは炉床であり、あるものは溶鉱炉だっ
た。さらにまた、「驚くほど多様な」石器や骨器のほか、広範囲にわたる木製器具の痕跡が
発見された。
グーチの最も驚くべき主張の一つは、ネアンデルタール人が10万年前に南アフリカで赤鉱石を得る
ために深い鉱脈を掘っていたというものだ。「中でも最大の赤鉄鋼坑遺跡は、その採掘量が
100万キロに達していたことを示している」。ほかにも、4万五千年前、4万年前、3万
五千年前とされる坑が発見されている、そしてどの場合も、坑はわざわざ苦労して埋めな
おされており、これは恐らく大地が神聖視されていたからだろう。ネアンデルタール人はこの赤鉄
鉱を儀式に用いたらしい。
54:、
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1950年、スミソニアン研究所のラルフ・ソレッキ博士は、イラク・クルディスタンのシャニダール洞窟を発掘し、ネア
ンデルタール人の埋葬儀礼の証拠を発見した。そこでは死者に野生の花を編んで作ったキルトが掛
けられていたのだ。彼の著書「シャニダール」(1971)の副題は、「ネアンデルタール人の人間性」
である。彼はネアンデルタール人が猿とは、まったく異なるということを示した最初の人類学者だ。
グーチによれば、赤鉄鉱は少なくとも10万年前から今日に至るまで使われている。オーストラ
リアのアボリジニが今もなお使っているのだ。彼の引用しているある専門家によれば、それは「あ
らゆる物質の中で最も霊的に豊かで、魔術的なもの」だという。
赤鉄鉱は磁鉄鉱と呼ばれる鉱物が酸化した物で、これはその名がしめすように磁力を帯びている。
その小片を水面に浮かべると、それはくるくるまわって磁北を示す。そして、紀元前10
00年、オルメカ人はそれをコルクにつけて水に浮かべ、コンパスの針として用いていた。中国人が
コンパスを発明するより1000年も前だ。
グーチによれば、はとも含む多くの動物が、脳の中に磁鉄鉱のクラスターを持っており、帰巣に
用いられる。では、ネアンデルタール人もまた脳の中に磁鉄鉱のクラスターを持っていたのではないだ
ろうか、と彼は問う。それによって彼らは地中の赤鉄鉱を探すことができたのだ。いうま
でもなく、これは単に地中の水を探知するダウザーの能力の変種である。
ネアンデルタール人が赤鉄鉱を求めた理由は何であれ、彼等が何らかの文明を持っていたことは確実だ。
2002年1月、ネアンデルタール人が一種の瞬間接着剤を使っていたことが明らかとなった。こ
れはハルツ山脈の褐炭工で発見された一種のコールタールで、8万年前のものとされる。その一つに、
手の指紋と石器と木器の印象があった。つまりこのコールタールは、木の柄を石器の刃に固定す
る一種の接着剤として用いられていたのだ。
コールタールは樫の木から作られるが、製造には摂氏300~400度の温度が必要だ。ドイツ、
イェナのフリードリヒ・シラー大学のディートリヒ・マニア教授は言う、「これはネアンデルタール人がこれらのコールター
ルを偶然手に入れたのではなく、自ら意図的に作り出したものであることを示している」。