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実は、「種の起源」が出版されてからわずか7年後の1856年、最初の原始人が発見され
たかに見えた。デュッセルドルフから数キロはなれたところに、教会の賛美歌の作曲家にちなん
で名づけられた、ネアンデルという風光明媚な峡谷(ドイツ語ではネアンデルタールになる)がある。そ
こには石灰岩の断崖があり、それを切り出していた作業員が骨を発見したのだが、それは
あまりに重く、荒削りだったため、熊の骸骨だと思ったほどだった。しかし、ヨハン・フルロット
という地域の学校長がこれを見て、人目でこれが熊などではなく、類人猿のような人間の
骨であることがわかった。湾曲して突き出た額と、顎がほとんど無い形をしていた。奇妙
なことに、この生き物の脳は、現代人より大きかった。だが、大腿骨の曲がり具合を見る
と、かがみ込んだ姿勢で歩いていたことを示唆していた。この小さめのゴリラのような生き
物が、人間最古の祖先なのだろうか。
教育を受けたもの達は、そうではないといった。彼らのほとんどはキュヴィエの弟子であり、
なかには、この頭蓋骨は1814年にロシアからナポレオンを追ってきたコサック人のものであると提
唱するものまでいた。そして、細胞病理学の創始者として高名なルドルフ・ウィルハウは、これは
痴呆者の骨だと考えていた。しばらくの間、学校長のフルロットは意気消沈していた。だが、チャ
ールズ・ライエル卿が、この「痴呆者」は、間違いなく原始人であるとの見解を発表したのであ
る。ヴィルハウは自分が誤っていたことを認めようとはしなかったが、その後25年間で成さ
れた多くの新たな発見を通じて、ネアンデルタール人が、まさに初期の人類であったことに疑いの
余地はなくなった。
すると、これこそが「失われたつながり」、あるいはダーウィンの弟子で議論好きのヘーケルがこの
んだ呼び方だと「ピテカントロプス」、猿人というもののようであった。でも本当にそうなのか?
エンジンの脳は、現代人よりもずっと小さいはずで、大きいはずはないのではなかろうか。も
しそうならば、ネアンデルタール人は、もっと最近、たとえば10万年くらい前の存在でなくては
ならない。