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1974年から82年までドイツ連邦共和国の首相を務め、知日派としても知られる
ヘルムート・シュミット(Helmut Schmidt,1918-)は、1989年末にドイツの高級紙
『ディー・ツァイト』が主催した座談会で次のように語っている。
「ヨーロッパ的概念は中国のような国では全く使いものになりません……
中国人を民主主義の概念によって救うことは、あまり期待できないと思われます。
彼らは何百年も上から下される儒教的伝統の中で育ってきています。これは
周恩来や鄧小平において支配的な観念になっており、天安門事件での大量虐殺
の歴史的背景になっています。……日本も民主主義ではありません。外見上は
民主主義に見えていますし、日本人自身は民主主義だと信じています。彼らの
信心深いこの信仰を壊すべきではないかも知れませんが、日本は民主国家には
なりません」
(「東欧革命の原因と結果」石田勇治訳、『世界』1990年4月臨時増刊号、155頁)
『アジアは〈アジア的〉か』(植村邦彦、ナカニシヤ出版)