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新潮社刊 パトリック・スミス著 森山尚美訳
「日本人だけが知らない日本のカラクリ」
彼は歴史を見逃さない。そのチェックは聖徳太子や万葉集の昔まで遡る。
ここでは私の印象に残った一つを挙げる。一五七六年、日本に暮らした
最初の西洋人、イエズス会修道士ジョアン・ロドリゲスは日本人について
こう記している。
「日本人には心が三つある。世間に向けて口にする偽りの心。友達だけに
打ち明ける胸のうちの心。そして、ほかのだれにも見せず、心の奥に
しまっておく自分だけの心」。
シンプルだが、真実ではないか。これを受けて著者スミスは喝破する。
だから日本人は集団の中で「仮面」をつける。「みんな同じ」という
仮面だ。こういう民を三百年間統治した徳川の治世を、スミスは徹底
調査した末の結論はこうだ。
「徳川の将軍たちは儒教の原理主義者だった。徳川幕府は、掟書、条目、
法度、陰惨な刑罰など、なんであろうと恐怖状況維持に必要な手段獲得
に取り憑かれていた・・・江戸の日本は後のソ連邦またはクメール・
ルージュのカンボジアと比較することすらできる」