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日本文化はその物質的な面では西洋文化に似ていて、工業はまだ未発達の
段階にある。しかし、日本文化の精神面は西洋、特にアングロ・サクソン的
西欧文化の精神面と全くちがう。天皇を現人神と崇拝するのは、どの村の
どの学校でも教え込まれて成功し、人民が国家主義を支持するささえに
なっている。日本の国家主義的ねらいは経済面だけではない。中世的な
王朝の繁栄と領土との野心もある。日本人の倫理観は功利主義ではなくて、
強烈な理想主義である。親孝行が基本であり、その中に愛国心を包含している。
それは天皇が彼の国民の父であるからである。日本人の物の見方には、
皇帝とローマ教皇との関係についての13世紀の理論によく見られる型と
同種類である迷信的で現実認識の欠如したところがある。しかし、
ヨーロッパの場合、皇帝とローマ教皇とは別々の人間であったから、
両者の争いが自由な発想を助長させた。日本では1868年の明治維新以後、
国民は一人の神聖な人間に結合され、団結体制に疑問を生むような内部的な
争闘はない。
中国とちがい、日本は宗教的な国である。中国人は証明されない限り、
人の言うことを信用しない。ところが日本人はウソと証明されるまで
信用する。天皇は神聖なり、という見解に不利などんな立証も聞いた
ことがない。
B・ラッセル『中国の問題』(理想社)