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「自信過剰、狂信、強烈な劣等感、ときに病的なほど強くなる一等国へのこだわり。
こうした態度は、これから見ていくように、どれも日本近代史で重要な役割を
果たしてきた」
「現在でも日本の国粋主義者には、日本が他国と違って優れていることを
裏付けるために海外の学問研究を利用するという不愉快な傾向がある」
(明治憲法発布の様子を描いた絵画について)「どの人も身長が不自然に高い。
どうやら木版画家が全員の脚を実際よりも少しばかり長く描いたようだ。
天皇の横には各国の外交団が陣取り、『よし、よし』という表情で式典を
見守っている。まるで学校の演劇発表会に来た親のようだ」
森有礼は西洋文明の優位を疑わず、日本が追いつくためには西洋人との国際結婚を
推進するのが一番よいと主張したほどの人物だ」
(鹿鳴館で開かれたダンス・パーティについで、ピエール・ロティは)「日本人
男性は燕尾服を着ているが、まるでサーカスの猿のようだ」
(日露戦争を描いた絵について)「そうした絵は、どれも決まって日本人を長身で
色白の勇敢な人物に描き、敵である中国人を弁髪姿の醜くて臆病な野蛮人に
仕立てている。まるで日本人がヨーロッパ人に近い違う人種に変わったような
描き様だ」
(高村光太郎にとって)1920年代になると…ヨーロッパでの年月は周囲から拒絶
されて孤独を味わった日々として意識されるようになる。フランス人女性との
恋愛も、苦い思い出に変わった。彼女と一夜をともにしても、翌朝に鏡を見て
みれば、そこにはモンゴロイドである黄色い日本人がいるばかりなのだ。
こうした自己嫌悪は、徐々に外国嫌いと日本民族優越意識へと変わっていった」
『近代日本の誕生』(イアン・ブルマ、ランダムハウス講談社)