06/08/05 22:25:38 0
>>791の続き
中世日本人は決して瞬間的にキレるのではなく、その場は必要に応じた儀礼関係を
維持し、しかし決して復讐を忘れず、その日が来るのを虎視眈々とうかがいつづける。
当時の西洋人にとっては、この日本人の恨みを内に秘めた「穏やかさ」が相当に
不気味だったようだ。ほかの宣教師も同様に「われわれの間では偽りの笑いは
不真面目だと考えられている。日本では品格のある高尚なこととされている」
と述べており、彼らは現代日本人もよくやる「お愛想笑い」をきわめて不可解な
ものと感じていたらしい。
自力救済を旨とする一方で、天皇を頂点とする独特な身分制のヒエラルキーが
強固に残ったのも、中世日本の大きな特徴である。そうした社会にあって、
人々はその地位や状況にふさわしい振る舞いをし、私的な復讐心を内に秘める
術を身につけていった。その結果、彼らは自己の名誉についてきわめて過敏で
ありながらも、それを内面化する粘着型の気質を帯びていったようである。
宣教師たちは、そうした当時の人々の複雑な心性を違和感とともに鋭く感じ
とっていたのだろう。
『喧嘩両成敗法の誕生』(清水克行、講談社選書メチエ)