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さらに、「日本では、歴史的にも、法が権力者自身の行動を規制する役目を
果たしたことがまったくない」(102ページ)とも指摘しています。
あきらめの心理の原因となっているもう一つの要因が「和」の精神といえます。
聖徳太子が十七条憲法で「和」を強調して以来、日本人は政治的に厳しく抑圧
されてきたため、「和」を装うしか道がなかったというのがウォルフレン氏の
見方で、「現在でも日本の社会では真の対立はすぐに表面下に押し込められる
ので、対立が対立として適切に処理されない」(259ページ)という傾向がある
ようです。
その結果として、日本人の生活は、ハンガリー、ポーランド、チェコなどの
東欧諸国がかつて経験したのに比べても、はるかに強く、特定の政治的
イデオロギーに支配されている(政治化されている)と、これら東欧諸国出身
の人々は語っているそうです(298ページ)。
また、日本では民衆の力によって、政治が変わったという経験もないようです。
明治維新は武士階級の一部がリードしましたし、戦後の民主主義も米国の指導の
下に導入されたもので、民衆が勝ち取ったものではないためです。
日本の政治のリアリティに最も深い関心を寄せた研究者で、偉大な歴史家であった
E.H.ノーマン氏は次のように述べているそうです。
「日本の遅咲きの封建主義の過酷な抑圧は、現代の日本に精神的かつ社会的な
深い傷痕を残しており、その一見平穏かつ整然たる外観の内側、底知れぬ暗部に、
暴力と、病的興奮(ヒステイアリア)と、獣性が鬱積している」(Origins of
the Modern Japanese, Random House、 1975)