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雨を乞う 水牛の角笛 東ティモール・ディリ
東ティモールの首都ディリで、伝統民族グループ「モラドレス」の一行に遭遇した。
美しい衣装に身を包んだ１５人の男性たちは、重そうな金製の装飾品を身につけていた。
エウジェニオ・サルメント代表によると、頭に月や星を表すカイバウという冠を着け、首には太陽を象徴する円形のベラックをかける。
連帯を意味するビーズの首飾りや、ケケという腕輪も欠かせない。
子供７人、孫１２人がいるというドミンゴ・デイエズスさん（６７）が手にしていた大きくて真っ黒な水牛の角に興味をそそられた。
カラウ・ディクルと呼ぶ角笛で、乾期に雨乞いの儀式を行う際などに吹く。「大切な役割なので、どの部族にも必ず１人は吹き手がいる。
私は父親から習い、１５歳から吹いている」という。
ブウォーというほら貝のような音がする。試させてもらおうと受け取ると、ずしりと重い。なんとか抱えたが、吹いてもプスともいわない。
「とにかく、力いっぱい吹くこと。肺活量がある男にしか吹けないよ」と、デイエズスさんは得意そうだ。
この日の一行は、ポルトガルと旧植民地の政治・経済協力組織の会議に参加する南米やアフリカなどからの客人らを歓迎するため、全国から集まった。
「旧宗主国やインドネシアの影響が強くても、独自の文化や伝統を継承していく」という。
角笛にも使う水牛は、同国で大切な財産だ。今でも結婚前、新婦へ新郎から結納のように水牛を贈る習慣がある。
記者を眺めていたグループの一人が別れ際、「あんたは水牛３３頭分くらいだな」と笑って言った。
それって多いのか、少ないのか。怖くて聞けなかった。（郷富佐子）
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