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★しあわせのトンボ:深夜、町を歩きながら=近藤勝重
このところの気分の重さは、今度の総選挙の結果に起因するのははっきりしている。何も今の世の中がいいと思わないが、
ここまで自民党が勝つと、原発は?憲法は?といろいろ気になる。あの「3・11」は何だったのかという思いも禁じ得ない。
こういう時、内向きの世界にずっと身を置くと、気分が重いどころかめいってくる。……どこかへ行きたい。
それこそ吉行淳之介氏のエッセー集「街角の煙草屋までの旅」じゃないが、近所の公園でも部屋にいるよりはましだ。
季節が冬でなければ、ぼくはきっと群馬県の奥利根まで足を運んでいただろう。しかし風邪をひきやすい体ゆえ、
雪の地に抱く不安が遠出したいという思いにブレーキをかけてくる。
夜、民俗学者の宮本常一氏の本を手に取った。1981年、73歳で死去した氏の歩いた距離は16万キロ、地球4周分といわれる。
日本地図に足跡を赤印で記しているうちに、図上が真っ赤に染まったそうだ。氏の本はこういう気分の時にはありがたく、心に効く。
「民俗学の旅」で何度読んでも興味深いのは、郷里の山口から大阪に出る時に父親から示されたという10カ条だ。
そのうちの(1)?(3)は旅の心得として役立つ。ポイントだけを記すと(1)汽車へ乗ったら窓から外をよく見よ
(2)新しく訪ねて行った所は必ず高い所にのぼってみよ(3)金があったら、その土地の名物や料理は食べておくのがよい??である。
ぼくはこの(1)?(3)を旅の心得にプラスしてこんなふうに解釈している。自分が今いる所から人の世をよく見る。
そして自分がこれから何を求めて生きるか、つまりはこれからの人生、どんな旅をするかを考えてみよという教えだ、と。(>>2-3へ続く)
毎日新聞 2012年12月21日 12時52分
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