13/02/06 23:05:34.26 /Bc9uqgM0
群馬の爺様から聞いた話だ。
知ってのとおり土合駅・土樽駅ともに魔の山谷川岳への最寄駅で、夏ともなると登山客で溢れとった。
土合は一般ルート=安全な登山道に近くほとんどの登山者はそこで降りたが、ザイルを担いだ二人は土樽まで乗った。
土樽からは峻険な岩登りのルートに続いた。
死と隣り合わせのロッククライミングに憧れてたそいつらは、だが未熟だった。
岩に打ち込んだハーケンが抜けて、一人が宙吊りになった。
相棒はなんとか助けようとしたが、上に吊り上げることも下に降ろすこともままならない。
そうこうしてるうちに、魔の山が本性を現し始めた。霰の混じった氷雨が、岩場から逃げられない二人を容赦なく打った。
雨はすぐやんだが真夏にもかかわらず気温が氷点下近くに下がり強風が絶え間なく吹き付けた。
「こんなことなら、土合で降りて行けばよかった…」
宙吊りのそいつは顔を真っ青にしながらすぐ下の相棒にそんなことを嘆いたが、そのうち何もしゃべらなくなった。
冷たくなったそいつが岩場から降ろされたのは二日後だ。
土合駅過ぎたあたりから、叫び声のようにも聞こえる音が追いかけてくるようになったのはそのあとからじゃ