16/05/01 19:58:01.63 0.net
>>632
「あんたこそ、禁煙したらどうだ?」
「あー? うっせえよ」
余計なお世話だと言わんばかりに吠える人面犬は更に毒吐きを続けるためか空気と共に煙草を深く吸い込んだ。
「―ってかおまえなあ」
言葉と共に煙を吐き出し、
「いいのか? 俺達にこんなに深く関わっちまって。今ではお前がほとんど俺達と同義の存在だろうが」
青年は自分を心配しているともとれる人面犬の言葉におや? と思い、反射的に空を見上げた。
空は未だ快晴だ。
……珍しいこともあるものだ。
そう思いながら青年は人面犬に答える。
「構わないさ―それに」
「おーいTさーん、町内会の祭り始まっちまうぜー」
竹藪の外から人が呼ぶ声がする。
それに青年は大声で少し待つよう応え、人面犬に片目をつぶって笑ってみせた。
「俺には共に居てくれる人がいるからな」
「ケッ、これだから寺生まれは……」
笑みの響きを含んだ声で言うと人面犬はそっぽを向いた。「あばよ」と吠える人面犬の後ろ姿に青年は声をかける。
「これから町内の七夕祭りに出てきてあの子が持ってきてくれた短冊を飾るんだが、来るか?」
「誰が行くか、あの小娘も小娘だ。七夕に短冊飾りてえなら学校にも竹の一本や二本生えてやがるだろうに、なんでお前の所にわざわざ持って来るかねぇ」
「皆と一緒に飾りたいんだろう。学校にいる仲間たちだけではなく、生徒も含めた学校の皆とな。
普段はそんな事出来ないからせめてこういう機会にでも」
「そういうもんかねえ」
「そういうものさ」