16/04/30 18:39:45.60 0.net
>>530
夕暮れ時、逢う魔が時とも呼ばれる時間帯、青々と茂る竹藪の中に大小二つの人影があった。
小さい方の人影が大きい方の人影に歌を披露している。
小学生くらいだろうか、夕日に照らされて映える赤いスカートに赤いランドセルの女の子が歌うのは今日この日に相応しい歌だ。
「さーさーのーはーさ~らさら―」
大きい方の人影、青年を見上げて〝たなばたさま〟の歌を舌足らずに歌う女の子の声はうっすらと緊張を孕んでいる。
ひと通り歌い終わると女の子は青年を上目使いに見上げた。採点を乞うようにおずおずと訊ねる。
「……どお? お兄ちゃん」
問われた青年は口許を緩めると女の子のおかっぱ頭に掌を乗せた。
「上手だよ花子さん。感動した」
褒めながら髪を撫でると花子さんは誇らしげにえへへと笑う。
彼女は満足すると青年にランドセルの中に入った紙の束を差し出してきた。
「はい、赤い紙さんと青い紙さんの紙でみんなでつくったんだよ」
「確かに受け取った」
青年が紙の束を受け取ると花子さんは「おつかい、ぶじにできた!」と微笑み、あのね、と青年に話し出した。
「これからね、なつになってね、あつくなるでしょ? だからね、わたしたちね、すっごくいそがしくなるんだー」
怪談の時期だからな、肝試しをする連中もいるだろう。
そう思いながら青年はクリスマスが待ち遠しくてたまらない子供と同じように期待に興奮を露わにしている花子さんを見て苦笑した。
「あまりおいたをしないように。と皆にも言っておいてくれ」
「はーい」
さて、どこまで分かっているのだか。
元気に手を挙げて返事をしている花子さんにそう感想を抱いていると、竹藪にもう一つ人影が侵入して来た。
それに気付いた花子さんがその影に呼びかける。
「お姉ちゃん!」
「花子ちゃん、そろそろ帰りましょうか」
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