16/04/29 18:07:11.00 0.net
>>483
「まあとにかく酷いもんじゃった。」
うむ。わしは今、きっと暗い顔をしているに間違いなかろう。
孫もどことなく沈欝な顔をしているようにも見える。まあ、そうじゃろうなあ。
「空戦というのは、単純に言えば、個人と個人とが空で命のやり取りをする、という事じゃ。
相手を殺さねばこちらが殺される・・・それをする為だけに技を磨いておる訳でな。」
孫が顔をそむけるようにした。殺すの殺されるのというのは穏やかではないからな。
とはいえ、これは大事なことじゃ。
「砂漠での夜間戦闘で見た光が美しく感じられたのは、それだからだったのかもしれん。
あの光が当たれば、そこでは命が失われている。それを美しいと表現するのはある種の傲慢でもあろう。
じゃがな。飛行士、いや軍人は皆、何かを護りたい、護らなければならない、その一心で戦っておるのじゃ。
その思いが。その決意の表れが、あの輝きから感じられるような、そんな気がしてならんのじゃよ・・・」
孫はしばらく考え込んで追ったが、やがてわしの目をまっすぐ見つめて頷きおった。わかってくれればいいのじゃ。
うむ。賢くて良い子じゃのう。どれ、頭をなでてやろう。
「うわっ、あの、おじいちゃん?」
何となく迷惑そうな顔をしておるな。むう。大人になると滅多になでられる事などないのじゃから、今のうちになでられておけ。