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2ちゃんねる
2003/06/10 00:00
ある日、ホームページにこんなメールが届いた。
【掲示板最大の2ちゃんねるで、名誉毀損されています。犯人を突き止めて、名誉毀損で訴えてください】
そこに記されていたアドレスをクリックすると、ニュース仕立ての「書き込み」がなされていた。
「東北地方に起こった大地震により、タレントの乙武さん(27)の家に火災が発生した。26日午後9時20分、乙武さんの家は全焼し、丸焦げになった乙武さんの遺体が発見された。
調べによると、妻の仁美さんはすでに脱出しており、なぜか逃げ遅れた乙武さんは自力でドアを開けられず、車椅子ごと火だるまになって発見された模様」
誰もが自由に書き込みできる匿名掲示板「2ちゃんねる」において、僕は不思議と愛されているようで、これまでも何百回となく殺されている。
だから、今回だって特に驚きはしない。いつものことだから。そりゃ、ヘコむ。いい気持ちはしない。
その書き込みを見た友だちは、気遣いの言葉をかけてくれる。「そんなの気にするなよ」「無視するに限るよ」
そんなとき、僕はパソコンを開き、「お気に入り」のフォルダから「2ちゃんねる」を選び出す。僕を悪く言う人々の書き込みを読む。薬みたいなものかもしれない。
それまで持っていた自信や自尊心といったものが一気に崩れ去り、代わりに謙虚な心が入り込む。泣きたくなることもある。でも、それくらいがちょうどいいと思っている。
彼らの文言は、あまりに心なく、的外れなものが多い。けれども、時に足元を見つめさせてくれるものもある。
「あんな文才のないやつが」と書かれれば文章を磨くことに貪欲になれるし、「障害があること以外に何のウリもない」と指摘されればウリを作ろうと必死になれる。
匿名だからこそ好き勝手に書けるけれど、匿名だからこそ本心が出る。
僕をよく思っていない人たちの存在を知り、意見を聞くことで、見たくない自分の姿が見えてくる。そこから目をそらすことの方がよっぽど簡単でラクなことだとはわかっているけれど……。
名誉毀損をちらつかせながら彼らを黙らせることは、確かにできるのかもしれない。
でも、それでは単に彼らの口を閉ざしたに過ぎない。
誹謗中傷する人々の気持ちを少しでも変えるよう努力する。それは、僕にとって意味のないことではない。