15/01/06 12:09:45.96
嘘バレ 番外編⑴
先頭で馬を馳せるエルヴィンにぴったりと並走するモブリット
その後ろには数十人の調査兵団の面々が礼拝堂を目指して追随している。
馬の振動に時々苦痛の表情と油汗を浮かべるエルヴィンを見かねてモブリットが声をかける
「団長、少し休憩を挟みましょう。相当無理をなさっているのでは?」
エルヴィンは荒々しく皮袋から水を飲み、首を横に降る。
「我々は今のところ記憶改竄を受けていない。間に合う可能性がある。
一刻の猶予も許されないのだ。
このまま急ぐぞ!」
押し黙ってその判断に従うモブリット。
「お前は有能な部下だモブリット、誇りに思う。
現地に着いたら早急にハンジと組んでこちらの作戦を伝えてくれ。
恐らく既に地下洞窟の前線で戦闘態勢に入っているだろう。
危険な任務だが壁内人類の未来のためにも可及的速やかに尽力してほしい」
モブリットは一瞬歯を食いしばり、ほんの少しの間を置き「了解です」と答えた。
妙な間を目ざとく見逃さなかったエルヴィンが「何か問題でもあるのか?」と訪ねた。
「いえ…」
「言ってみろ。エレンが食われて時間切れになれば我々はどうやら排便の仕方すら忘れてしまう運命のようだからな……」
しばらく迷った様子のモブリットが重い口調で答えた。
「その……あまり良い予感がしないのです。
実は口止めされていたのですが、ハンジ分隊長は先日から体調を崩していました。
この数日の騒動で数日間、不眠不休の動き詰めで無茶を押し通していたために、戦闘となれば万全の態勢ではないはずなのです。
私としては最悪の状況を想定せざるを得ません」
「そうか、ではハンジが戦闘不能の場合、お前はまずリヴァイに着け。
リヴァイが無理ならミカサ・アッカーマンかジャン・キルシュタインに連絡事項を班員に伝達させるようにしろ。
行き渡ったところで合図の信煙弾を確認したら作戦開始だ」
「了解です!」
今度は迷いのない軽やかなモブリットの返答にエルヴィンは眉をひそめた。
「ところでハンジの体調不良というのは何だ?心当たりはあるのか?」
その問いに再び暗い顔つきに戻るモブリットが意を決したようにエルヴィンの視線をまともに受けこう答えた。
「流産されたそうです」