10/09/04 04:58:26 tjVgfGQN0
本拠地、クリネックススタジアムで迎えた西武戦
先発田中が大量失点、打線も勢いを見せず惨敗だった
スタジアムに響くファンのため息、どこからか聞こえる「今年は１００敗だな」の声
無言で帰り始める選手達の中、昨年の首位打者鉄平は独りベンチで泣いていた
初のクライマックスシリーズで手にした栄冠、喜び、感動、そして何より信頼できるチームメイト・・・
それを今の楽天で得ることは殆ど不可能と言ってよかった
「どうすりゃいいんだ・・・」鉄平は悔し涙を流し続けた
どれくらい経ったろうか、鉄平ははっと目覚めた
どうやら泣き疲れて眠ってしまったようだ、冷たいベンチの感覚が現実に引き戻した
「やれやれ、帰ってトレーニングをしなくちゃな」鉄平は苦笑しながら呟いた
立ち上がって伸びをした時、鉄平はふと気付いた
「あれ・・・？お客さんがいる・・・？」
ベンチから飛び出した鉄平が目にしたのは、外野席まで埋めつくさんばかりの観客だった
千切れそうなほどに旗が振られ、地鳴りのようにイーグルスの応援歌が響いていた
どういうことか分からずに呆然とする内川の背中に、聞き覚えのある声が聞こえてきた
「鉄平、守備練習だ、早く行くぞ」声の方に振り返った鉄平は目を疑った
「ジャ・・・山崎さん？」 「なんだ鉄平、居眠りでもしてたのか？」
「か・・・克典コーチ？」 「なんだ鉄平、かってに克典さんを引退させやがって」
「磯部さん・・・」 鉄平は半分パニックになりながらスコアボードを見上げた
１番：聖沢 ２番：渡辺直 ３番：鉄平 ４番：山崎 ５番：ルイーズ ６番：中村 ７番：草野 ８番：牧田 ９番：嶋
暫時、唖然としていた鉄平だったが、全てを理解した時、もはや彼の心には雲ひとつ無かった
「勝てる・・・勝てるんだ！」
高須からグラブを受け取り、グラウンドへ全力疾走する鉄平、その目に光る涙は悔しさとは無縁のものだった・・・
翌日、ベンチで冷たくなっている山崎が発見され、聖沢と渡辺は病院内で静かに息を引き取った