18/06/26 17:29:08.99 g4DnXiKb0.net
「やめろ!力丸!」
狸が鳴いた。しかし、侍は動かない。
それがド汚ねぇ狸による、拒絶を装った肛門性交の合図であることなど侍にはお見通しだったからだ。
本来の肛門性交とは、才と不遜によって膨れ上がった者を、望まぬ性交によって打ち倒すものだ。
目の前にぶら下がった肛門に飛び付いて相手を慰めるなど、平成の侍に相応しい行為ではない。
しばらくは距離を置こう。侍はそう思った。
そうすればいずれ、この獣へと堕ちた男は、持ち前の記憶力の欠如により回復を始め、いずれは帝の地位を取り戻すだろう。
そして必ず、帝は再び不遜に満ち溢れ、成敗棒を振り回す。その時こそ、平成の侍の必殺剣の出番だ。
侍が、未だ「やめろ!力丸!」と連呼する狸に背を向けて歩き出そうとした、その時だった。
「まどろっこしい読み合いしてんじゃねぇよたわけ!!」
そのがなり声と共に突如として現れたタクシーが、車体ごと狸の肛門に突っ込んだ。
ズンッ
「んっ!」
ブゥン!ブゥン!ブゥン!ブゥン!
「んっ!んっ!んっ!んっ!」
「喘いでんじゃねーよたわけ!」
「んっ!タクシードライバー!」
気が付くと、侍は走り出していた。二人がずっと遠くに行った後も、無我夢中で走り続けていた。目には涙が浮かんでいた。
無償の愛が、いつしか己を満たす為だけの駆け引きへと変わってしまったのはいつからだろう?
満たされぬ二人の間にできた溝を、あのタクシーは軽々と飛び越えてしまった。もしも自分も、あのように行動していたら? たった一言でも素直な気持ちを伝えていたら?
悲しみによって侍の虚を洗い流された一人のオカマの目に、大粒の涙がこぼれた。