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戦時国際法論 立作太郎 著 日本評論社 昭和6 1931年
P49
戦時叛逆を犯す者は、現行中捕へられたると否とを問はず、後日之を處罰するを得べきである。
凡そ戰時重罪人は、軍事裁判所又は其他の交戰國の任意に定むる裁判所に於て審問すべき
ものである。然れども全然審問を行はずして處罰を爲すことは、現時の國際慣習法規上禁ぜらるる
所と認めねばならぬ。
戦時重罪人中(甲)、(乙)、(丙)、(丁)中に列擧したる者の如きは、死刑に處することを爲し得べき
ものなるも、固より之よりも輕き刑罰に處するを妨げない。
戰時重罪人が一定の刑期の自由刑に處せられたる際、戰爭終了後之を解放せざるべからざる
や否やの議論を存するのである。解放論者は、戰時重罪が戦爭状態の存する間のみ犯罪たる
性質を有すると爲し、一旦戰爭終了せば、啻(ただ)に新たに戰時重罪の處罰を宣告し得ざるに
止まらずして、戰時重罪に關する刑は之を執行するを得ざるに至ると爲すのである。
之に對して反對する論者は、已に死刑を以て論じ得べきに拘はらず、刑を輕減して自由刑に處
するものなるを以て、假令戰爭終了するも、依然刑を執行し得ざるべからずとし、若し戰爭終了
せば、戰時重罪人を解放せざるべからずとせば、戰時重罪として有罪と認めらるる多数の揚合に
於て死刑に處せらるに至るべく、實際上犯人に取りて苛酷なる結果を生ずべしと爲すのである。
ヴェルサイユ條約は後説に依つたものと認め得べきである(同上條約第二百十九條参照)。
立作太郎氏の言う「國際慣習法」とは、日本がヴェルサイユ条約に調印したという事実を言うの
だろう。つまり、「合意は拘束する」から。
「國際慣習法」という文言は、『戦時国際法』立作太郎(1918年版)にはないが、『戦時国際法論』
立作太郎(1931年版)で、初めて登場している。