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北海道東部の大空町。冬場は氷点下２０度を下回ることもある。午前６時半、
女満別のグラウンドで、ナインの保護者の一人、丹治（たんじ）良一さん（４６）が
トラクターに乗り込み、除雪を始めた。一面に積もった雪の中を何度も往復し、
土がうっすら見えるようになった時には、正午になっていた。
ボランティアでの半日仕事だが、「徹底して応援する」と言い切る。根っこには、
同高野球部ＯＢとして、悔しい体験がある。
入学した８１年当時、部員は十数人。紅白戦もままならない。ひたすら続けた素振り、
雪上の走り込み。照明設備がなく、日没後は監督の車のヘッドライトを照らして
練習した。しかし、公式戦は３回戦が精いっぱい。「もっともっと試合がしたかった」。
常に悔しさと未練を抱えていた。
２年生の時の秋の北見支部予選の初戦。終盤、ショートを守っていた丹治さんは
目を疑った。２点差を追う女満別に見切りを付け、応援客が帰り始めた。チームは
その後、逆転し、勝利を収めたが、「勝てないと思われ、すごくショックだった。
後輩にはそんな思いを絶対にさせたくない」。卒業後は農業の傍ら、毎日、
野球部の練習を見に行き、公式戦も必ず応援に駆け付ける。グラウンドの除雪も
０９年から始めた。
野球部は９０年代に部員減で一時休部。雨風でマウンドは崩れ、雑草が茂り、
アスパラガスまで生えた。センバツ初出場は、９９年の復活以降、関係者が
一つ一つの思いを積み上げた結果と考えている。
長男で外野手の海里（かいり）君（１７）＝２年＝を含む部員１９人全員を下の
名前で呼ぶ。「みんなうちの子。めんこい（かわいい）よ」。汗をかいて５分も
すれば上着が凍る中、平然とグラウンドを駆ける姿が頼もしい。
「『負けたら終わり』の高揚感や緊張感は高校野球でしか味わえない。
夢中になって楽しんで、そして勝ってほしい」
今年はいつも以上に春が待ち遠しい。
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