20/12/13 01:44:41.45 Hujv6bby.net
>>開発母体の研究開発環境とその特徴
小野薬品の研究開発における最大の特徴は、1960 年代以降、PG 分野へ研究資源を集中的に投下し続けたことにある。また、ヒヤリング調査の中で、「社内には、アラキドン酸関係の仕事はすべてやるべきであるという空気があった」との発言があるように、PG 分野の新薬を創出するという経営方針が十分に浸透しており、全社的に PG 研究に取り組んでいたことが分かる。事実、1980 年代初めには、研究開発費の 80%が PGs 研究に投入されている23。
PG 分野への集中が当該分野に関する吸収能力の蓄積、ネットワークの構築、研究開発における範囲の経済性（例えば、ランダム・スクリーニングの成功）に寄与した点は、これまでに述べてきた通りである。
また、研究分野の集中が結果的にインフルエンス活動抑制につながった点も注目される。医薬品の開発には多大なコストがかかるため、効率的な資源配分が重要である。同時に、研究開発には高い不確実性が伴い、また、研究者と資源配分の意思決定者である経営者の間で情報の非対称性も大きいため、研究者が自身のプロジェクトに有利な資源配分を求めて、インフルエンス活動を行うインセンティブを持ちやすい。実際、本事例研究と平行して行われた他の画期的新薬に関する聞き取り調査（例えば、アルツハイマー型認知症進行抑制剤「アリセプト」など）では、社内での研究開発リソースの奪い合いや軋轢がプロジェクトの進行を阻害する要因になったと指摘されている。
一方、オノンのケースでは、そのような問題は存在しなかったという。これは、上述の通り、小野薬品のアラキドン酸関係への資源集中がトップダウン的なものであったこと、また、小野薬品が 1970 年代初めまで有力な自社オリジンの医薬品を持たない比較的小規模な製薬
企業であったことが�